借地権や底地の評価額は路線価に借地権割合を乗じて計算されますが、これは相続税を確定する為の基準であって、借地権や底地の取引相場ではありません。借地権や底地を一般の方が購入するケースはまれであり、不動産会社へ単独で売却する場合と地主さんと共同で売買する場合とでは大きく価格が変動します。 思わぬ価格で借地権を売却してしまったり、底地を買い取りをしてしまっている方少なくないようです。 借地権の売却や底地の買い取りについては借地権売買に詳しい専門家に相談してはいかがでしょうか?

借地権売却価格のコーヒーカップ・ソーサー理論

借地権の価格、相場不動産業界では底地と借地権の価格についてはよくコーヒーカップ(借地権)とソーサー(底地)に例えられるようです。
例えば一客の値段が10,000円する英国製ウエッジウッドのコーヒーカップでもソーサーだけではほとんど買手はつかないでしょう。 上下揃って初めて10,000円の価値があるからです。

同様に1億円の土地(例えば底地40%、借地権60%の場合)でも借地権だけ売却しようとしても借地権価格は4000万円程度、底地だけ売却しようとしても1000万程度になってしまい、別々に売却した場合は本来の価値の半分になってしまう事はよくあるようです。 このように借地権売却価格は状況に応じて非常に流動的です。

■借地権の単独売買はどうして安いのか?

借地権は強い権利ではありますが、土地を完全所有している訳ではないので地主さんに対して地代の支払いだけではなく、契約更新時の更新料(借地権価格の10%前後)の支払いも発生します。また建て替えの時は立替承諾料や譲渡にも地主さんの許可や承諾料が発生します。

買い手から見るとこのように様々な金銭的なコストが継続的に発生し、また何かに付けて地主さんから承諾を得なければならない煩わしい面もあります。

このような理由から単独で借地権を売却する場合は実勢価格に借地権割合を乗じた値段よりもかなり安い値段で取引されています。

■底地の単独売買はどうして安いのか?

底地の単独売却も同じように買い手から見ると底地を購入しても借地人が契約を解除しない限り契約は永遠に継続されるので、借地権を自ら買い取らない限り、自分の土地ながら建物を建て利用する事も期待できません。

また昔から継続しているので賃料の値上げもできず、土地の実勢価格に比べて借地権の賃料は非常に安く、底地を買っても投資効果は期待できません。

このような理由から単独で底地を売却する場合も実勢価格に底地割合を乗じた値段よりもかなり安い値段で取引されています。

一億円の評価額の不動産の借地権(底地)売却についての一例

借地権の売買価格と相場

■借地権の売却は地主さんとの共同売買が理想ですが・・

借地権や底地を単独で売却する場合は更地の実勢価格に比べてかなりの安い金額で売買される事になってしまうので、地主さんと一緒に共同売買をするのが理想です。

しかし地主さんの事情や意向もあり、また地主さんと借地人さんとの関係も大きく影響しますので地主さんとの共同売買ができる可能性は少ないでしょう。 

■借権を相続した時の選択肢は売却か有効利用か?

借地権の相続方法は、遺産分割協議事情や借地権地の立地事情などもそれぞれ違いますので選択枝は様々ですが、主に下記の6種類のいずれかの選択が多いようです。

 ①借地権契約を継続して自宅として住み続ける。

 ②底地を地主さんから買い取り、土地の所有者となる。

 ③借地権を地主さんに買い取ってもらう。

 ④土地が広い場合は地主さんと等価交換し土地所有者となる。

 ⑤借地権を第三者または買取業者に売却する。

 ⑥借地契約を継続し、借地上にアパート等の収益物件を建て有効活用する。

相続した借地権はそこに住む予定がない相続人さんにとっては負担と感じる場合もありますし、逆に収益物件等を建て借地権を積極的に有効活用される方も場合もあります。 

しかし借地権に関する情報が少ないので判断を誤る事になってしまったり、借地権が複数の相続人で共有されている場合などは更に権利関係が複雑になりますので、借地権の売買や活用ができないで困っている方も少なくありません。

複数で共有された借地権の場合など権利関係が複雑な場合は借地権の売却や有効利用については借地権に詳しい専門家に相談されたほうがいいでしょう。

 

借地権割合と借地権の評価額について

借地権の評価額を算出する借地権割合や路線価について解説致します。路線価と借地権割合によって算出された借地権や底地の評価額は相続税の算出のベースとなる価格であって、実際の底地や借地権の売買ではその状況に応じて大きく変わっているのが現状です。

借地権割合とは?

地主さんから賃貸借契約にて土地を有償で借り、自宅を建て登記している場合、その土地を使用できる権利として借地権が発生いたします。借地権は財産のひとつですので、相続や贈与の場合は課税の対象となります。その財産の評価をする為に国税局が各地域ごとに借地権割合を設定しております。 

一般的には、地価の高い地域ほどその割合も高くなり、東京の商業地では80%~90%、住宅地では60%~70%程度の割合の場合が多いようです。

借地権割合はどこで調べるの?

国税局のHPの財産評価基準(路線価図・評価倍率表)の中に掲載されております。アルファベット記号(A~G)で表示され、それぞれの借地権割合は下記の表のとおりです。

相続、遺贈又は贈与により取得した借地権に係る相続税及び贈与税の財産を評価する場合にその割合が適用されます。

借地権割合と路線価の確認は国税局のHPへ

路線価図と借地権割合の見方

路線価と借地権割合は国税局のHPの財産評価基準(路線価図・評価倍率表)で確認ができます。アルファベット記号(A~G)で表示され、それぞれの借地権割合はA:90%、B:80%、C:70%、D:60%、E:50%、F:40%、G:30%です。 

              420C=420千円(42万円)/平米 

数字は一平米あたりの路線価を表示しており、単位は千円です。記号のCは借地権割合です。

路線価と借地権割合確認は国税局のHPへ

借地権割合と評価額 価路線価図の例 

都内の主な借地権割合の例

地域割合地域割合
千代田区90%~70%足立区80%~60%
中央区90%~70%大田区80%~60%
新宿区90%~70%墨田区80%~60%
港区90%~70%目黒区80%~60%
中野区80%~60%渋谷区90%~70%
文京区80%~60%杉並区80%~60%
杉並区80%~60%台東区70%~60%
練馬区80%~60%駒沢駅周辺70%~60%
三軒茶屋周辺80%~70%用賀駅周辺70%~60%

借地権の評価額は?

借地権の評価額は自用地(更地)としての評価額に借地権割合を掛けて求めます。

  借地権価格 = 自用地としての評価額 X 借地権割合  

注)自用地としての評価額とは市街化地域の宅地の場合は路線価に対して 土地の形状や道路付等の状況を加味して評価額が決定されます。

  例:1億円の評価額で借地権割合がC(70%)の場合)

    7000万円   =   1億円   X   70%

借地権を地主さんにや第三者に売却する場合や底地を買い取る場合に借地権割合を目安に価格交渉がなされますが、路線価に借地権割合を乗じて算出された借地権の評価額が絶対的なものではありません。あくまでも相続税を算出する尺度の一つであるとお考えたほうがよろしいかと思います。地主さんとの関係や土地の場所等状況に応じてその価格は大きく変動致します。