通常、賃貸借契約を結び物件を借りると、借主は賃料の数ヶ月分相当額の保証金を貸主に預け入れる必要があります 。これは貸主が賃料の滞納などのリスクを回避するために担保の目的で借主から預かるもので、一般に無利息で、契約が終了すると貸主は借主に預かった保証金を返却することになります。
しかし純粋な預かり金であれば、一度預けたら契約が終了するまで残高はそのままなのですが、上記の償却が設定されていると保証金の一部が貸主の収入に充当されていき、その分保証金の残高が減っていくことになります。
これがどういうことかというと、例えば保証金が100万円で「償却年3%」とある場合では、契約開始から1年目に100万円×3%=3万円、2年目に入るとまた3万円、3年目でさらに3万円と毎年3万円づつ保証金残高が減っていくということで、契約期間が3年の場合、3年が経過した時点では、当初100万円だった保証金残高は91万円になっている計算になります。また、たいていの契約には契約更新時には目減りした保証金を当初の残高に回復するという条項があるので、借主は契約を更新するとなると目減りした保証金9万円分を補填して残高を100万円に戻す必要があるということになります。
また「解約時償却2ヶ月」などと定められている場合は、保証金の預け入れが賃料の8ヶ月相当額であれば、うち2ヶ月分が解約時に差し引かれ、手元に戻ってくるのは6ヶ月分ということになります(こちらは解約時に1回差し引かれるだけなので更新時の補填はありません)。
しかしいずれのパターンであっても借主の負担であることには代わりがなく、借主からすると、何で賃料以外にこの様なお金を支払わなくてはならないのかという気持ちが正直なところかも知れません。
実際のところ何故保証金を償却するのかという点については明確な根拠はなく、更新料の代替名目であったり原状回復費用への充当のために設定されたかつての(貸主に有利な)習慣が今も残っているというのが最も有力な根拠のような気がします。
当然のことながら借主には不評の慣習であることから、最近は徐々にではありますが償却の設定された物件は減る傾向にありますが、それでもなお多くの物件では「償却○%」といううたい文句が残っています。
大手デベロッパーや生損保会社の物件では償却が設定されている物件は殆どありませんが、これらの物件は建物のグレードも高く賃料自体の水準が高いという面がありますし、さりとて賃料水準も高くなく償却も無い物件ということになると、数自体が多くないというジレンマがあります。
どんな形であれお金が出て行くことには変わりがないと考えれば、償却費用を含めた年間の総支出を固定費と考え、その範囲で良い物件を探すというのが、現時点では最も現実的な考え方とならざるを得ないのが実情です。